「何をやればいいか分からない」から
労災を防ぐことを目標に職場の安全衛生に取り組む中で聞いたのは、現場の従業員の「何をやればいいか分からない」という声でした。安全ヨシは、その声から生まれました。

リスクアセスメント、KYT(危険予知訓練)、ヒヤリハット報告、5S。手法はたくさんあります。けれども、目の前の問題にどれを使えばいいかが分からなければ、最初の一歩が出ません。そこで安全ヨシは、手法から入るのではなく、職場で見つけた1つの問題から入るようにしています。
- 安全を確かめて撮る
- 見きわめる
- 進め方を決める
- 繰り返す
- 委員会で報告
進め方

見つけたら、安全を確かめて撮る巡視でも、ふだんの作業中でも
職場巡視(衛生管理者を選任している事業場では、衛生管理者が少なくとも毎週1回行います)や、ふだんの作業の中で「危ない」「ヒヤッとした」と思ったものを、写真に撮って残します。この時点では、何の問題かを決めきれなくてかまいません。
差し迫った危険があるときは、撮るより先に安全を確保します。作業を止める、人を近づけない、責任者に知らせるなどの対応を先にします。安全が確保でき、撮影してよい場所であれば、写真に撮ります。人の顔や名前、会社の機密が写らないようにも気をつけます。
何の問題かを見きわめる起きたことか、どんなけがにつながるか
撮った写真を見ながら、その問題が何なのかを整理します。
- もう起きたこと(ヒヤリハット)か、これから起きそうなこと(危険予知)か
- 起きたら、どんなけがになるか(事故の型:転倒、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ など)
- 原因は、設備や環境か、作業のやり方か、物の置き方か
いつ・どこで・誰が・何をしていて・なぜ・どうなりそうだったか(5W1H)で書くと、整理しやすくなります(ヒヤリハット報告書の書き方)。
進め方を決めるリスクアセスメントか、KYT か
見きわめた内容から、どの手法で進めるかを決めます。目安は次のとおりです。
| こんなとき | 進め方 |
|---|---|
| けがが重くなりそう。くり返し起きている。設備や作業のやり方を変えないと、危険が残る | リスクアセスメント リスクの大きさを見積もり、大きいものから対策を決める |
| 設備などの対策をとったうえで、作業する人の確認で防ぐ部分が残る。作業の前に、チームで危険を共有したい | KYT 4ラウンド 危険のポイントを絞り、行動目標と指差し呼称を決める |
| 物の置きっぱなしや、置き場所が決まっていないことが原因 | 5S・3T(3定) 要る物と要らない物を分け、置き場所・置く物・量を決める |
けがが重くなりそうなもの、くり返し起きているものは、KYT や 5S・3T だけで済ませず、リスクアセスメントで見積もってから対策を決めます。KYT や 5S・3T は、リスクアセスメントの代わりではありません。
1つの問題に、2つ以上の手法を使ってもかまいません。たとえば、雨で濡れる出入口なら、マットを敷く対策はリスクアセスメントで決め、通るときの確認は KYT で決める、という組み合わせです(衛生管理者の1か月)。
KYT で最後に決めるのは、チームの行動目標です。設備や作業のやり方を変えて危険を減らせるなら、そちらを先に考えます(対策の優先順位)。迷ったときは、まずリスクを見積もってみると、急ぐべきかどうかが分かります。
繰り返して、職場を良くする次の巡視で、直ったかを確かめる
見つける、見きわめる、進め方を決めて対策する。これを巡視のたびに繰り返します。次の巡視では、前に見つけた問題が直っているか、対策に効果があったかを確かめます。
1件ずつは小さくても、記録が積み重なると、どこに危険が多いか、何が直ったかが見えてきます。その積み重ねで、職場が少しずつ良くなっていきます。
効いた対策は、ほかの職場にも広げる。同じ設備や作業がある職場にも同じ危険がないかを確かめ、効いた対策を当てはめます。これを横展開といいます(横展開のしかた)。
費用のかかる対策は、やりっぱなしにしない。設備を直す、作業台を買うといった恒久的な対策は、見つけたその年のうちにできないこともあります。そのままにせず、おおよその費用を見積もって記録しておき、会社が来年度の予算を決める時期に申請して、確実に実現します。ただし、法令で決められている措置や重大な危険への措置は、予算を待たずに対応します。それまでの間は、安全に作業を続けられる暫定措置をとり、続けられないときは作業を止めます(対策の予算化)。
委員会で報告する記録を、会社の活動として残す
1か月の記録を、安全衛生委員会(衛生委員会・安全委員会)で報告し、審議します。常時50人以上の労働者を使用する事業場では衛生委員会を設けることが法令で決められており、安全委員会も、業種によって常時50人以上または100人以上の事業場で必要です。委員会は毎月1回以上開きます。委員会で調査審議する事項には、危険性・有害性の調査(リスクアセスメント)とその結果にもとづく措置も含まれます(安全衛生委員会の作り方、議題と議事録)。
日々の記録をもとに報告すれば、委員会の審議を、事実にもとづいて進められます。報告に使った資料を議事録の別紙として保存しておけば、あとから確かめられます。議事録には、委員会の意見とそれを踏まえて講じた措置などを記録して3年間保存し、議事の概要は労働者に知らせます。
委員会を設けなくてよい規模の事業場でも、安全や衛生について関係する労働者の意見を聴く機会を設けることとされており、その場の資料にも使えます。人数によって求められることの違いは「従業員の人数で変わる、安全衛生の決まり」にまとめています。
ポイント
- 手法から入らず、1つの問題から入る。どの手法を使うかは、問題を見きわめてから決めます。
- 安全を確かめたら、まず撮る。考えるのはそのあと。差し迫った危険には、撮る前に作業を止めるなどの対応を。その場で決めきれなくても、残しておけば後で進められます。
- 決めた対策は、次の巡視で確かめる。やりっぱなしにしないことで、職場が良くなっていきます。
- 委員会で報告して、会社の活動にする。担当者1人の取り組みで終わらせず、記録として残します。
この流れを、1つの危険を例に最初から最後までたどったのが「衛生管理者の1か月」です。
安全ヨシは App Store で近日公開です。
安全ヨシでは
- 巡視のその場で記録できます。ホームの 記録する から 気づき・ヒヤリハット を選び、写真を2枚まで添えて残します。巡視そのものは、改善 タブの 巡視 から記録します。
- 何の問題かを、項目に沿って書けます。「危険予知(KY)」か「ヒヤリハット」を選び、5W1H と「どんな怪我になるか」(事故の型)を入れます。必須は事故の型だけです。
- 同じ記録から、進め方を選べます。保存した気づきから、リスクを評価する →、KYT 4ラウンドを作成する →、5S・3T改善を記録する → に進めます。
- 続けたことが残ります。対策は 対策 タブで担当・期限・完了を追いかけます。指摘のなかった巡視も記録できます。
- 予算の時期にお知らせします。対策ごとに、概算費用・予算申請額・実績費用を分けて残せます。設定で「予算編成月」を選ぶと、毎年その月の初めに、概算費用を入れた対策の予算申請額を確認するよう通知が出ます。
- 委員会の資料にできます。ホームの レポート出力 から 委員会で報告する を選ぶと、1か月分の記録を、議事録の別紙になる Excel と説明用のスライドにまとめます。
App Store で近日公開
出典
- e-Gov 法令検索「労働安全衛生規則」(第11条 衛生管理者の定期巡視、第21条〜第23条の2 委員会と議事録)
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 - 厚生労働省「安全委員会、衛生委員会について教えてください。」(よくあるご質問)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/1.html - 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「安全衛生委員会を設置しましょう」(兵庫労働局 掲載)
https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/001324367.pdf - 厚生労働省 別添1「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(対策の優先順位)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/03/h0310-1a.html - 厚生労働省 職場のあんぜんサイト 安全衛生キーワード「KYT(危険予知訓練)」
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo40_1.html
「進め方を決める」の表は、安全ヨシの考え方による目安です。個別の事業場で法令上どのような対応が必要かは、所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。
