なぜ集めるのか
ヒヤリハットは、仕事中に、もう少しでけがをするところだった出来事のことです。

よく知られた「ハインリッヒの法則(1:29:300)」は、同じ人が起こした330件の災害のうち、1件が重い災害なら、29件は軽いけが、300件はけがのない事故だった、という分析です。数字そのものより、重い災害の手前には、けがにならなかった出来事がたくさんある、という考え方が大切です。けがのない段階で拾い上げて、すばやく対策することが、重い災害の予防につながります。
実際に起きた出来事だけでなく、「このままだと危ない」と作業の前に感じたこと(想定ヒヤリ、危険予知)も報告の対象にすると、集まる件数が増え、危険に気づく力も高まります。
想定ヒヤリも報告する
想定ヒヤリは、実際には起きていないけれど、「このままだと、こうなりそうだ」と気づいたことです。起きたヒヤリハットと分けて報告する例が、新潟労働局のサイトに掲載されている報告制度の導入例にも示されています。

同じ場所の、2つの報告
ヒヤリハット(起きた):雨の日の朝、台車を押して第2倉庫の出入口を通ったとき、濡れた床で足が滑った。取っ手につかまって転ばずに済んだ。
想定ヒヤリ(起きそう):雨の日は第2倉庫の出入口に雨水が入り込み、床が濡れている。台車を押して通ると、足を滑らせて転びそうだ。
- 起きる前に拾える。だれかがヒヤリとするのを待たずに、危険に手を打てます。
- 出しやすい。「自分の失敗」を書く必要がないので、新しく入った人や、ふだん報告しない人も出しやすくなります。
- KYT やリスクアセスメントの題材になる。想定ヒヤリは、そのまま KYT の1ラウンドの「危険」や、リスクアセスメントで見積もる危険の候補になります(KYT 4ラウンド法)。
- 分けて記録する。起きたものと想定したものを分けておくと、件数の集計や、委員会での報告がわかりやすくなります。
報告書に書く項目
新潟労働局のサイトに掲載されている、報告制度の導入例では、次のような項目が挙げられています。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 所属・氏名 | 報告した人 |
| 日時 | いつ起きたか(感じたか) |
| 場所・作業 | どこで、何の作業をしていたか |
| 何があったか | ヒヤリとした出来事、危険を感じたことの中身 |
| 問題点 | 作業環境、設備・機器、作業方法、自分の状態(よく見えなかった、あわてていた、疲れていた など)のどこに問題があったか |
| 今後の対策 | こうすれば防げる、という希望 |
| 種別 | 実際に起きたヒヤリハットか、想定ヒヤリか |
安全管理者などがコメントや対策を書く欄を、報告者の欄とは分けて設けておくと、そのまま検討に使えます。
報告では、そのときふだんどおりの作業(定常作業)だったか、ふだんと違う作業(非定常作業)だったかも書いておきます。同じ場所・同じ機械でも、非定常作業のときは危険の中身が変わるからです。違いと、非定常作業が危ない理由は、定常作業と非定常作業の違いにまとめています。
書き方のコツ
- 5W1H で書く。いつ、どこで、誰が、何をしていて、なぜ、どうなりそうだったかを書くと、読んだ人が状況を思い浮かべられます。
- 「どんなけがになりえたか」まで書く。転倒、はさまれ、墜落などの事故の型と、けがをしそうだった体の部位を書くと、重さの見当がつきます。
- 事実と、自分の考えを分ける。見たこと・起きたことを先に書き、原因の考えや対策の希望はあとの欄に書きます。
- 原因を人だけにしない。「不注意だった」で終わらせず、床、設備、置き場所、手順、時間に追われていなかったかなど、環境や仕組みの側も見ます。
- 短くてよい。わかる範囲で書けば十分です。空欄があってもかまいません。
書き方の例
伝わりにくい例
倉庫で滑ってヒヤッとした。今後は気をつける。
伝わる例
- いつ・どこで:10月15日 16時ごろ、第2倉庫の出入口付近
- 何をしていて:台車で段ボール箱を運び入れていたとき
- 作業区分:定常作業(毎日の荷の運び入れ)
- 何があったか:床が濡れていて足が滑り、台車の取っ手につかまって転ばずに済んだ
- どうなりえたか:転倒して、腰や手首を打つおそれがあった(事故の型:転倒)
- 問題点:雨の日は出入口に水が入り込む。マットが敷かれていない
- 対策の希望:出入口に吸水マットを敷く。雨の日は始業前に床を拭く
報告を続けるコツ

- 報告した人を責めない。これを職場の約束として決め、守ります。責められると、報告は出なくなります。
- 手順どおりでなかった報告も、手順を見直すきっかけにする。手順書に無理がなかったかを考えます。
- 書きやすくする。空欄があっても出してよいことにし、わからないところはあとで聞きます。職長が聞き取って代わりに書いてもかまいません。
- 朝礼などで繰り返し呼びかける。
- 出した結果を返す。どんな対策をとったかを報告した人と職場に伝えると、次の報告につながります。
集めたあとの使い方
- 安全担当がコメントを書く内容を確かめ、足りない情報を聞き取ります。
- 関係者で対策を考える重いけがにつながりそうなものは、リスクアセスメントで見積もり、優先順位を決めます。
- 全員に知らせる朝礼や掲示で共有します。KYT の題材にするのも効果的です。
- ほかの職場にも広げる(横展開)同じ危険がほかの場所にないかを確かめ、改善の例を社内で共有します(横展開のしかた)。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、イラスト付きのヒヤリ・ハット事例が多数掲載されています。朝礼や教育の題材に使えます。

安全ヨシでは
- その場で、スマホで書けます。「危険予知(作業前の予測)」か「ヒヤリハット(起きた出来事)」かを選び、写真を2枚まで(近くと全体)添えられます。
- 5W1H を順に入れるだけで文章になります。いつ・どこで・誰が・何の作業・なぜ・どのように、を入れると「〜のため、〜するおそれがある」の文を組み立てます。必ず選ぶのは事故の型だけです。
- 報告書の項目もそろっています。作業環境・設備機器・作業方法・自分自身の問題(12のチェック)と、今後の対策を入力できます。
- 想定ヒヤリを分けて報告できます。気づきの入力で「ヒヤリハットとして登録」をオンにし、「想定ヒヤリとして報告する」にチェックします。Word とスライドの「ヒヤリハット・想定ヒヤリハット報告書」の区分に○が付き、委員会の Excel の一覧にも「想定ヒヤリ」の列で出ます。
- 定常作業か非定常作業かを選べます。気づきの入力の「作業区分」で、通常作業(定常作業)か非定常作業かを選びます。報告書の「定常作業・非定常作業」に○が付き、委員会の Excel の一覧にも「非定常作業」の列で出ます。
- 横展開の候補にできます。「横展開の候補」をオンにした気づきは、委員会の資料に「社内横展開候補」としてまとまります。
- 報告書をファイルにできます。ヒヤリハット報告書を Word やスライドに書き出せます。
- そのまま次へ進めます。同じ記録から、リスク評価、KYT 4ラウンド、5S・3T の改善記録に広げられます。
App Store で近日公開
出典
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト 安全衛生キーワード「ハインリッヒの法則」
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo24_1.html - 新潟労働局 掲載資料「ヒヤリハット事例・想定ヒヤリ 報告制度の導入について(例)」
https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/…/260711_04hiyarihatto_houkokuseido.pdf - 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「ヒヤリ・ハット事例」
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/anrdh00.html
書き方の例は説明のために作ったものです。
